とあるエンジニアのライフログ

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屍者の帝国/伊藤 計劃, 円城 塔

フランケンシュタインがもし世界中に量産されたら?というSF小説。ダークなテーマなのに全体に流れる心地良い雰囲気がとてもいい。

屍者の帝国

屍者の帝国

前半の舞台がヨーロッパで、後半になると舞台が日本に切り替わるのだけれどそのコンストラストが抜群に素晴らしい。常に優雅なクラシックが頭の中に流れてくるようなとても素敵な小説です。戦争、人体実験がテーマなのに決して不快な気持ちにさせない美しいストーリーなのがとても不思議だった。ナチス政権時代のユダヤ人強制収容所「アウシュビッツ強制収容所」の景観がその施設の残虐さと裏腹にとても美しい物だと何かで聞いたことがあるのだけど、ひょっとしたらそういったことと関連するのかもしれない。そこら辺の感覚はココロの中でなんとなくわかるのだけど頭のなかでまだ整理ができていない。ドラゴンクエスト3のラスボスであるゾーマが「滅びこそ我が喜び。死にゆく者こそ美しい。さあ我が腕の中で 息絶えるがよい」という印象的なセリフがあってその言葉の持つ意味が消化できないのだけどどうしても心の中にひっかかってしょうがないのです。例えばラピュタの城とかの人類の文明が滅びた建造物に不思議と惹かれるのはそういったものがあるのかもしれない。滅び行くもの、滅んだものが美しいと感じるこの感情はいったいどこからくるのだろうか?