とあるエンジニアのライフログ

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氷壁/井上靖

 

氷壁 (新潮文庫)

氷壁 (新潮文庫)

 

 

会社の人に勧められて読んでみた。
あまり期待してなかったけど、読みやすい文章と登場人物のキャラクターの良さに引き込まれて一気に読んだ。
途中まで飽きないで読んだのは久しぶり。
クライマーとサラリーマンという二足のワラジで生活している主人公が登山中にザイルが切れて友を失う。
なぜザイルが切れたのか?という謎に科学的な観点や登山家の視点で考察してゆく。
この小説のすごいと思うのが、登山、科学、恋愛、会社などの様々なテーマが複雑に絡み合いしかもコンパクトにまとめられているということだ。
カラマーゾフの兄弟(ドフトエフスキー)も宗教、恋愛、経済など様々な、テーマをまとめた構成がすごいなあと思った。
この小説の主人公は実は主人公の上司ではないだろうか、と思う。
登山家としては成功してるものの会社では扱いにくい部下に対して、時に叱咤し時に労わりとにかく人間臭いのだ。
日本のサラリーマンが読むとあるあると共感できる。(たとえば有給の取り方だとか、趣味と仕事の両立とか)

なぜ山に登るのか?
使い古されたチープな問いだが、危険を犯し時には命すら落とすこともある登山は野球やサッカーなどのスポーツとは決定的に異なるものである。
ある人は野鳥をとりに、ある人は未開の土地に行きたいという好奇心から、、、、
山に向かう理由は人それぞれだが、かつて野山を走りまわりウサギを追い野草を食べていた人間にとって自然から逃れて生きるのは不可能なのではないだろうか?と考える。